ごあいさつ
大会長
張 賢徳
帝京大学溝口病院精神科 教授
人は皆、日々の生活の中で、苦悩や不安、悲しみ、痛みを避けて通ることはできません。
私たちは苦しみながら、悩みながら、怯えながら生きています。
この人間心理は太古の昔から今まで、変わりないものだと思います。
そして、この心理が宗教を生み出したとのだと私は理解しています。
だからと言って、宗教をフィクションとして軽視するものではありません。
私はむしろ、「だからこそ宗教は人間にとって必要なのだ」と考えています。
そして、精神科医として日々臨床活動に従事する中で、患者さんの苦悩や悲しみに対して、
医学的な治療だけでは限界があると痛感しています。
精神医学と宗教のコラボレーションを真剣に考えたいと思ってきました。
そういう中で、臨床宗教学と精神医学を中心とする学際的な本学会が誕生し、
発足時から関わらせていただく僥倖に恵まれたことに心から感謝しています。
また、このたびは、第1回大会長・島薗進先生、第2回大会長・榎本稔先生に続き、
第3回の大会長を務めさせていただくこととなり、身の引き締まる思いを持ちつつ、
この幸運に、榎本稔理事長と学会役員始め関係者の皆様に心より感謝申し上げます。
今大会のテーマを「人は何を求めているのか?−その理解とケアを考える」としました。
人々は何を求め、援助者として何ができるのかを多面的、多角的、学際的に考えたいと思います。
ケアという表現は、宗教なら救済という言葉になるのかもしれません。
「救済」から受ける私の印象は、ケアよりも深い意味合いです。
臨床家として、ケアよりも深い救済が患者さんにもたらされるのであれば、素晴らしいことと思います。
臨床の場は医療だけではありません。人々の欲求とケア・救済について広く考えたいと思います。
学際的なコラボレーションが必要です。
この第3回大会がそのような場になることができれば大会長冥利に尽きます。
多くの方々のご参加をお待ち申し上げます。